イチョウ葉由来成分とは?機能性表示食品の届出内容と研究の見方
イチョウ葉を機能性関与成分とする届出情報について、表示されている機能、摂取目安量、研究の読み方を整理します。
機能性表示食品は医薬品ではなく、疾病の治療・予防を目的としたものではありません。感じ方には個人差があります。体調や服薬状況によっては注意が必要な場合があるため、必要に応じてかかりつけ医へ相談してください。
- 成分の概要・届出されている機能・摂取目安量と研究の見方
「最近、人の名前がなかなか出てこない」「買い物に行って何を買うか忘れてしまう」 --- 年齢とともに記憶力の衰えを感じている方は少なくありません。
イチョウ葉に含まれるフラボノイド配糖体とテルペンラクトンは、脳の血流を改善し、記憶力や認知機能の維持に役立つ成分として注目されています。機能性表示食品では215件の届出があり、記憶・認知系の成分として最も多くの商品に採用されています。
この記事では、イチョウ葉の2つの成分がどのように脳に働くのか、その科学的な根拠、そして人気商品の特徴をやさしく解説します。
イチョウ葉由来フラボノイド配糖体・テルペンラクトンとは?
基本情報
イチョウ(銀杏)は約2億年前から地球に存在する「生きた化石」と呼ばれる植物です。その葉のエキスには多くの機能性成分が含まれていますが、機能性表示食品で注目されているのは以下の2つです。
イチョウ葉由来フラボノイド配糖体
ケルセチンやケンフェロールなどのフラボノイド(ポリフェノールの一種)が糖と結合した成分
抗酸化作用が強く、脳の血管や神経細胞を酸化ストレスから守る
脳の血管を拡張し、血流を改善する
イチョウ葉由来テルペンラクトン
ギンコライドA・B・C、ビロバリドなどの化合物の総称
血小板活性化因子(PAF)の抑制を通じて血液の流れを促進
神経保護作用があるとされている
この2つの成分は常にセットで配合されます。実際、215件すべての届出で両成分が一緒に使われており、単独で使われることはありません。2つの成分が協力して脳の血流と機能を支えるイメージです。
1日の摂取目安と食事での摂取量
機能性表示食品に配合される標準的な量は以下の通りです。
これはイチョウ葉エキスとして約120mg分に相当します。ドイツのコミッションE(薬用植物の評価委員会)でも同等の用量が推奨されてきた実績があります。
なお、イチョウの葉を直接拾って食べたりお茶にしたりするのは推奨されません。未加工のイチョウ葉にはギンコール酸というアレルギーを引き起こす可能性のある成分が含まれており、市販の機能性表示食品ではこれを除去する処理が行われています。
機能性表示食品で届出されている効果
イチョウ葉由来の2成分を含む機能性表示食品は、2026年1月時点で215件が届出されています。そのうち有効な届出は156件です。
届出で頻出する効果キーワードを分析すると、以下の通りです。
「記憶」「認知機能」はほぼすべての届出で言及されており、イチョウ葉成分の中核的な訴求です。加えて約35%の届出では脳の血行改善にも言及されています。
届出されている主な表示文言のパターンは以下の通りです。
パターン1(記憶力維持型、最も多い):「イチョウ葉由来フラボノイド配糖体、イチョウ葉由来テルペンラクトンは、認知機能の一部である記憶力(言葉や図形などを覚え、思い出す能力)を維持することが報告されています。」
パターン2(血流改善+認知機能型):「イチョウ葉由来フラボノイド配糖体、イチョウ葉由来テルペンラクトンは、健常な中高年者の加齢によって低下する脳の血流や活動性を改善し、認知機能の一部である記憶の精度や判断の正確さを向上させることが報告されています。」
パターン3(記憶の精度型):「イチョウ葉フラボノイド配糖体、イチョウ葉テルペンラクトンは、認知機能の一部である記憶(知覚・認識した物事の想起)の精度を高めることが報告されています。」
科学的根拠の解説
イチョウ葉エキスの認知機能に対する研究は、ヨーロッパを中心に数十年にわたって蓄積されてきました。特にドイツでは医薬品としても使用されている歴史があります。機能性表示食品の届出のほとんど(213件/215件)は「機能性関与成分に関する研究レビュー」を根拠としています。
根拠として参照される主要な研究
Mix JA & Crews WD(2002)
研究デザイン: ランダム化二重盲検プラセボ対照試験
対象: 健康な高齢者262名(60歳以上)
期間: 6週間
摂取量: イチョウ葉エキス180mg/日
主な結果: 自由再生記憶(言葉を覚えて思い出すテスト)が有意に改善
遅延再認記憶(時間を置いて思い出すテスト)が有意に改善
自己評価による記憶力の主観的改善も確認
出典: Mix JA, Crews WD. "A double-blind, placebo-controlled, randomized trial of Ginkgo biloba extract EGb 761 in a sample of cognitively intact older adults." Human Psychopharmacology, 2002; 17(6): 267-277.
Kaschel R(2011)
対象: 健康な中年成人188名(45〜65歳)
摂取量: イチョウ葉エキスEGb 761® 240mg/日
主な結果: 自由遅延再生(覚えた情報を時間後に思い出す能力)が有意に改善
日常的な記憶課題(予定を覚える、名前を思い出すなど)のパフォーマンスが向上
注意力テストでも改善傾向
出典: Kaschel R. "Specific memory effects of Ginkgo biloba extract EGb 761 in middle-aged healthy volunteers." Phytomedicine, 2011; 18(14): 1202-1207.
Laws KR ら(2012)--- メタアナリシス
研究デザイン: システマティックレビュー・メタアナリシス
対象: イチョウ葉エキスの認知機能への効果を検討したランダム化比較試験を包括的に分析
主な結果: 認知機能障害のある患者において、認知機能の有意な改善が確認
健常者でも記憶や注意に関する一部の指標で改善傾向
標準化エキス(EGb 761®)を用いた研究で効果がより明確
出典: Laws KR et al. "Is Ginkgo biloba a cognitive enhancer in healthy individuals? A meta-analysis." Human Psychopharmacology, 2012; 27(6): 527-533.
エビデンスの評価
イチョウ葉エキスの記憶力・認知機能に対する効果は、ヨーロッパを中心に多数のランダム化比較試験で報告されており、エビデンスの蓄積は豊富です。
特に、ドイツのシュワーベ社が開発した標準化エキスEGb 761®を用いた研究が多く、品質管理された原料でのデータが充実しています。
ただし、注意すべき点もあります。
健常者における効果の大きさは軽度であり、劇的な記憶力向上を期待するものではない
研究によって結果にばらつきがあり、効果がはっきりしないとする報告も一部存在する
認知症の「予防」や「治療」が証明されたわけではない
効果の実感には個人差がある
代表商品の比較
イチョウ葉成分を含む代表的な機能性表示食品を、売れ筋・知名度を考慮して比較します。
シュワーベギンコ イチョウ葉エキス(アサヒグループ食品)
特徴: ドイツの老舗シュワーベ製薬が開発した標準化イチョウ葉エキスを使用。種の段階から栽培・抽出まで一貫管理された原料で、世界的に最も研究実績のあるイチョウ葉エキスを採用。価格.comの売れ筋ランキング1位
ポイント: エビデンスの信頼性を重視する方向け
イチョウ葉 脳内α(DHC)
特徴: 1日あたり810円(30日分)と低価格。イチョウ葉由来フラボノイド配糖体28.8mg、テルペンラクトン7.2mgの標準配合量。認知機能の一部である記憶力の維持と判断の正確さの向上を訴求
ポイント: コストパフォーマンスを重視する方向け
イチョウ葉(ファンケル)
特徴: 大手通販ブランドの定番イチョウ葉サプリ。品質管理に定評があるファンケルならではの信頼感。Yahoo!ショッピングの人気ランキング上位
ポイント: 通販で定期購入したい方向け
ネイチャーメイド イチョウ葉(大塚製薬)
特徴: 全国のドラッグストアで広く取り扱われているネイチャーメイドブランド。店頭で手軽に購入できるのが強み
ポイント: 店頭で気軽に始めたい方向け
歯につきにくいガム<記憶力を維持するタイプ>(ロッテ)
特徴: サプリメントではなくガムという独自の形態。噛むだけで手軽にイチョウ葉成分を摂取できる。記憶力を維持する機能を訴求
ポイント: サプリメントが苦手な方、手軽に試したい方向け
こんな人におすすめ / 注意が必要な人
おすすめの人
年齢とともに記憶力の低下を感じ始めた中高年の方
人の名前や予定を忘れやすくなった方
仕事や日常生活での判断力を維持したい方
脳の健康を意識して早めに対策を始めたい方
注意が必要な人
血液をサラサラにする薬(ワルファリン等)を服用中の方: テルペンラクトンの血小板活性化因子(PAF)の抑制作用により、出血リスクが高まる可能性があります。必ず医師に相談してください
手術の予定がある方: 出血リスクの観点から、手術の2週間前には摂取を中止するよう推奨されています
てんかんの既往がある方: ごく稀にけいれんの報告があるため、医師に相談してください
妊娠中・授乳中の方: 安全性のデータが十分でないため、摂取を控えてください
未加工のイチョウ葉を食べないでください: ギンコール酸によるアレルギーのリスクがあります
よくある質問
Q: フラボノイド配糖体とテルペンラクトンは別々に摂れますか?
A: 機能性表示食品では、この2つの成分は必ずセットで配合されています。215件すべての届出で両成分が一緒に使われており、研究でも組み合わせた状態で効果が確認されています。別々に摂るメリットはなく、セットで摂ることが前提です。
Q: DHAとイチョウ葉はどちらが記憶力に良いですか?
A: アプローチが異なります。イチョウ葉は脳の血流を改善することで記憶力に働きかけ、DHAは脳の神経細胞を構成する脂肪酸として脳の機能を支えます。どちらも記憶力に関する届出が多く、両方を配合した製品もあります。詳しくは記憶力を維持したい方へ|成分と根拠を比較をご覧ください。
Q: 効果が出るまでどれくらいかかりますか?
A: 主要な臨床試験では4〜6週間の摂取で効果が評価されています。ただし、効果の実感には個人差があります。継続的に摂取することが大切です。
Q: ドイツ産と国内産のイチョウ葉エキスに違いはありますか?
A: 研究実績が最も豊富なのはドイツのシュワーベ社が開発したEGb 761®という標準化エキスです。ただし、国内メーカーの製品もフラボノイド配糖体24%以上・テルペンラクトン6%以上・ギンコール酸5ppm以下という品質基準を満たしたエキスを使用しているため、基本的な品質は確保されています。
Q: 認知症の予防になりますか?
A: 機能性表示食品は「健常な中高年者の認知機能の一部である記憶力の維持」を訴求するものであり、認知症の予防や治療を目的としたものではありません。認知症が心配な場合は、かかりつけ医に相談してください。
まとめ
イチョウ葉由来フラボノイド配糖体とテルペンラクトンは、脳の血流を改善し、記憶力や認知機能の維持に役立つ成分です。215件の機能性表示食品に届出されており、記憶・認知系では最も多くの商品に採用されています。
ヨーロッパを中心に数十年にわたる研究の蓄積があり、エビデンスは比較的豊富です。ただし、健常者における効果は穏やかなものであり、認知症の予防を保証するものではありません。年齢とともに感じる記憶力の衰えに、日常的な対策として取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献
Mix JA, Crews WD. "A double-blind, placebo-controlled, randomized trial of Ginkgo biloba extract EGb 761 in a sample of cognitively intact older adults." Human Psychopharmacology, 2002; 17(6): 267-277.
Kaschel R. "Specific memory effects of Ginkgo biloba extract EGb 761 in middle-aged healthy volunteers." Phytomedicine, 2011; 18(14): 1202-1207.
Laws KR et al. "Is Ginkgo biloba a cognitive enhancer in healthy individuals? A meta-analysis." Human Psychopharmacology, 2012; 27(6): 527-533.
消費者庁「機能性表示食品の届出情報検索」
記憶力に関する機能性表示食品|主な成分と届出表示の比較関連する制度・成分・届出表示のポイントを詳しく確認できます。